思考と欲望の狭間

Twitterじゃできないような頭の整理や日常のことを

エピソードなんとか 現実の逆襲

「夢を持って頑張ろう」

 とても良い言葉だ。耳触りが良い。いつでも聞いていたいし、わくわくするし、事実僕らは小さい頃に大人たちからこの言葉をスパムメールのように送りつけられる。とってもハッピーだ。(余談だけどスパムは美味しい)
僕も色んな夢を持ったものだ。最初に持った将来の夢は今でもハッキリ覚えている。スターウォーズに出てくるジェダイの騎士だ。スクリーンの中でライトセーバーを駆使して悪と戦うオビ=ワン・ケノービの姿が、幼い僕の心に夢というフォースを覚醒させてくれた。

 しかし成長するに連れていって、僕たちは「現実」を否が応でも押し付けられる。
「夢を持て」と言っていた大人たちも、「現実を見ろ」と言うようになり、次第に「安定した職業に就くために良い大学に行け」と言うようになる。それが当たり前だと教えられた僕たちは、よく分からないまま進路を決め、よく分からないまま勉強し、よく分からないまま進学し、一方安定していないと言われる職業(声優やスポーツ選手など)を目指す人々を「夢見るガキたち」として嘲笑うようになる。
否定されるのは一部の職業に就くことだけじゃない。人生を楽しく、幸せに生きたい。当たり前のように思えるそれだけのことを、「甘ったれるな」とか「みんな苦しんでいるからお前も苦しめ」とか言われて否定されて、苦痛な現実を押し付けられるし、それが当たり前のように思い始める。

 僕も例外ではなかった。オビ=ワン・ケノービによってフォースに目覚めた僕の心は、「現実」という暗黒面に堕ちていった。

 でもおかしいと思わないか。夢っていうのは現実の上に存在するはずだし、夢があるからこそ人間は努力して成長するんじゃないのか。なんでそもそも現実=苦痛という式が成り立つんだ。なんでそれが当たり前だと思われてるんだ。

 みんなが言う「現実」って何なんだ?自分がやりたいことを諦めることか?辛い辛いって言いながらやりたくもない仕事を続けることなのか?
辛いだけならさっさと死んだほうが楽じゃないか?

 「現実」は苦痛なのが当たり前とした上で、それを再生産し続けていくならば、僕たちの世界は世代を経るごとに酷くなっていく一方じゃないか。VHSを何度も上書きしてすり減っていくように。すり減り続ければいつかは壊れる。そうしたらもう僕たちはヴァーチャルの世界に逃げ込んで幸せを得るしかないじゃないか。それならもういっそのことこんな世界捨ててしまったほうがいいじゃないか。

 そもそもみんなが目指している「安定」なんて存在しないんじゃないか。今はもう死にかかってる東芝SHARPの人たちだって、10年前は自分たちは「安定」の中にいると思ってたんじゃないのか。リーマンショックみたいなことが起きないとも限らないし、あと50年も経たずに必ず来るとされているシンギュラリティと、それによる産業革命レベルの社会変化の前では、もう全てが変わってしまって、今の常識なんてこれっぽっちも通用しなくなるんじゃないのか。

 だったら、存在するかどうかもわからない「安定」を目指すための攻略チャート、つまりとにかく勉強して良い大学に行けば安心みたいなことを教え込むんじゃなくて、本当に自分がやりたいことを見極めて、それを実現するために一体何が必要で、どういうリスクがあって、何をすればいいのかっていう「戦略的」に夢を目指すことを教えるべきじゃないか?考える時間も与えないで、躓いたら「お前が悪いんだ」って自己責任を押し付けるのはそれこそ無責任じゃないか?

 確かに夢を追うことはリスクがある。でも僕は自分が選んだ選択によって起きた結果は全て受け入れる覚悟があるし、たとえ目指していた夢を実現できなかったとしても、それを経験にできるし、すぐほかの路線に変更することもできるから、夢が実現できなかった=人生の失敗とは思ってない。むしろ親や社会に強制された選択をしたならば、僕はそいつらをずっと恨むだろう。「こんなはずじゃなかった。あいつらのせいだ」と。僕はみんながそういう考えを持てば世の中は絶対もっと面白くなると思う。もし誰も夢を目指さなくなったら、社会は必ず死ぬ。

 現時点で僕も夢を失っている。もちろんフィクションだと知っているからジェダイの騎士になろうとは思っていない。でも幼いころに純粋に夢を持っていた気持ち、つまり「フォースの輝き」はずっと探している。そのためにやりたいと思ったことはできるだけ全部やるようにしているし、面白いと思った人には何が何でもコンタクトを取ろうとしている。そうやって少しずつだけど着実に世界を広げている。未だに「現実」の恐怖に怯えているけど、もしオビ=ワン・ケノービが僕の前に現れて、僕のフォースを再び覚醒してくれるなら、僕は迷わずタトゥウィーンを抜け出してオルデランに向かうだろう。